ここでは、ジャズにおけるいわゆるウォーキングベースの基礎を、2beat(あくまで和製英語です)から作っていきます。基礎的な内容ですが、実はかなり実戦的でもあります。

ここで紹介するのは、シンプルな「ルートと5度とL.N.(リーディングノート)」を使ったパターンです。最初にスケールを勉強して、そこから4ビートにしてみる….というやり方は、多くの方にとって遠回りになることが多いです(理由は後述)。スケールの勉強はしばらく後からで大丈夫です!

 

1.コードの構成音(コードトーン)
まず覚えておくべきことは、コードの構成音です。コードトーンといわれる「1度(Root)」「3度」「5度」「7度」の四つは必ず覚えましょう。これらに関しての詳細は、書物などからいくらでも仕入れられるでしょうから、ここでは割愛させて頂きますね。もっとも、「基礎的なベースライン」という内容のシンプルさを保つため、ここでは3度と7度は使用いたしません。ルートと5度、そしてつぎに紹介する「Leading Note(Aproach Note、導音)」を使います。

 

①1度(Root、根音)
コードネームのアルファベット部分が指し示す音名です。C→ド D→レ….etc
ハーモニーの寄って立つ基準となる音であり、ベーシストがまず提示すべき音です。ジャズに限らず、余程の自信がない限りこの音から弾き始めましょう

②5度
コードサウンドを壊さないため(倍音列を根拠に、ルートに対しての親和性・帰属性が強いといわれる)、ベースラインに多用します。

この二つ「ルートと5度」がコードの骨格部分であり、ということはつまり楽曲の骨格でもあるわけです。逆に言うと、この二つを弾かないと、骨格の見えない華奢なサウンドになっていきます(それが常に「悪」ではないのでご注意を)。

 

③Leading Note(Aproach Note、導音)  ※以下、L.N.と表記いたします。
文字通り次の音(Target)を「導く」音です。ベースラインの処理メソッドの中では、「次の音(Target)」とは、「次のルート音」ときには「次のコードトーン」と考えていただいて結構です。(強進行の定義にあわせ、実は諸説あるのですが)ここではあえて、下記の6つ全てをL.N.として考えます

L.N.→次の音の「半音上下」「全音上下」「Targetの5度の音」

時にコードトーンに鋭くぶつかる音程もありますが、Jazzは不協度をコントロールする音楽でもありますので、一概にそれが良い・悪いとは言い切れません。なので、上記6つのどれを選ぶかは各人の判断(耳)にお任せいたします。言い換えると、「頭に流れる音、その音の響きが想像できている」なら何を使っても構いません。もっともこれはL.N.に限りませんけどね。

 

さて、それでは実際にこれらの音を使ってベースラインを作っていきましょう。それほど難しいことは出てきませんが、実際にリアルタイムで楽譜を追いながら、考え、演奏する事は当然大変です。じっくり取り組んでくださいね。

 

まずは、基礎的なルートと5度のみのラインです。必ずコードも同時に見ながら演奏してください。目標とするのは、コードを見ただけで、(演奏しなくても)これらのベースラインが頭に流れる、という状態です。えぇ~と思うかもしれませんが、期間の差こそあれ、正しい意識をもって練習・実戦を経験していけば自然とそうなっていくものですよ。

2ビートNo.1

 

 

同じコード進行でもうひとつ違うパターンを。
NO1-2

 

両者ともやっていることは同じです。そして、ルートと5度で作る「上昇」と「下降」が交互に来ていることに注目してください。必ずこうしなければいけない、という決まりではありません。ただ、これを意識することにより、小節と小節が連続性を持ち、次々とつながっていくような滑らかなベースラインを聴かせられます。あたかも、線(LINE)を引いていくようですよね。

 

 

さぁ、それではもっといろいろなコード進行を処理してみましょう。なるべく「上昇下降が交互に」くるようにしたベースラインです。

2ビートNO.2

譜が見えにくい方は、こちらからダウンロードしてください(PDF)

 

 

 

こちらのコード進行でもどうぞ。転調しようが、難しいコードが出てきようが、ルートと5度さえ追えていれば、ほぼ自動的にベースラインとしての処理ができますよね。

楽譜が見えにくい方は、こちらからダウンロードしてください(PDF)

 

 

 

次のコード進行でもどうぞ。(♭5)の付いたコードは、5度が半音下がります。

楽譜が見えにくい方は、こちらからダウンロードしてください(PDF)

 

 

 

少しだけ音を足してみます。4拍目のL.N.です。

楽譜が見えにくい方は、こちらからダウンロードしてください(PDF)

 

 

 

 

毎小節、4拍目のL.N.を入れてみましょう。ここまで来るとほぼ4ビートの雰囲気が見えてきていると思います。

楽譜が見えにくい方は、こちらからダウンロードしてください(PDF)

 

 

こういった処理をオールキー回しながら練習しましょう。L.N.は、毎小節入れなくても大丈夫です。楽譜はこちらからダウンロードして印刷してください

伴奏のみの音源です。

 

参考としてベースライン入りの楽譜もアップしておきますね。

楽譜が見えにくい方は、こちらからダウンロードしてください(PDF)

 

 

 

ここまでが基礎的な2beatです。4ビートにするには、当面、2拍目にはルートを弾いてみましょう。つまり、1拍目と2拍目はルートにしてしまうのです。シンプルですが、十分機能するベースラインになります。まずこのパターンでいろいろな曲のコード進行を練習してみてください。
やがてそれ以外の音も頭の中に鳴り始めてきます。その時にあらためてスケールなどの勉強をして、自分の弾きたい音を瞬時に見つけられるようにしましょう。最も大切なのは、ルートと5度の音が頭の中に常識的に鳴ること…つまり歌えることです。これが鳴らないと、当然スケールの音も歌えず、スケール上を適当に行ったり来たりするだけになってしまうのです。最初にスケールに取り組んでも、遠回りになることの理由です。

 

マイナー系のドリル、ディミニッシュやaug、sus4の処理、スカラーパターンとコーダルなパターンの併用など、この先にはまたいくつか取り上げなければならない処理も出てまいりますが、これ以降はレッスン内で行うことにいたします。いずれにしてもここまでのルートと5度・L.N.のパターンが基本であり、ベースラインのかなりの部分を占めます。引き続き時間をかけて、しっかりと身体の中に入れてくださいね!